「何を出すか」より「誰が出すか」が問われる世界

国外企業は日本企業と比較してフットワークが軽く、例えプロダクトが未完成と言えるレベルであっても速やかにリリースすることによって市場占有率を高めて結果成功する、なんてことはまず無かろう。

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仮にこの音響技術を応用した商品やサービスをApple以外のメーカー、特に我が国の無名のベンチャー企業が発表したところで注目されて一大ブレイクするかと言えばまず難しいのではないか。

現実問題ソニーでさえ30年ほど前にこの技術を完成させていても普及させることは難しかったわけである。

AppleがiPhoneを世に公表する10年ほど前、我が国には既に「iモード」をはじめとした携帯電話向け情報サービスが存在し、携帯電話からニュースなどの情報やインターネットバンキング、証券取引、ゲームなどの娯楽サービス、着信音や待ち受け画面などのコンテンツを利用することが既に当たり前となっており、その市場(携帯電話向けコンテンツ、モバイルサイト向け広告市場)が確立していた。

その頃欧米先進国において普及していたのは白黒液晶の通話専用携帯電話であり、そこにカラー液晶でコンテンツサービスが利用でき、パソコン向けのWebサイトもある程度閲覧できるiPhoneが持ち込まれたらもてはやされるのは当然であろう。

iPhoneが発売される数年前にもシャープがウィルコムと協力してW-ZERO3を販売するなど、各社がWindows Mobile搭載の携帯電話を開発、販売していたものの、いずれも我が国におけるスマートフォンの普及率を押し上げる状況までには至っていない。

そりゃそうであろう、当時のiPhoneを含むスマートフォンは我が国で普及していたフィーチャーフォンと比較して機能面や利用できるサービス面で圧倒的に劣っていたわけである。すなわち、日本人が携帯電話で当たり前に行っていること(情報の閲覧、コンテンツの利用やその料金の決済、非接触式ICカード機能による交通機関の利用や各種決済)が当時のスマートフォンでは出来なかったわけであり、消費者にとっては「欠陥品」でしかなかったわけである。

本来であれば我が国にiPhoneが持ち込まれても人々の反応は前述のWindows Mobile端末の時と同じように見向きもされなかったことであろう。だが、iPhoneとなった途端に我が国ではスマートフォンが爆発的に普及し、当時評判になるほど悪かったソフトバンクの回線品質をものともせず普及率を押し上げたわけである。

その上、我が国の携帯電話ビジネスは「囲い込み」と批判されることが多いわけであるが、つい最近までiPhone向けアプリの利用料金の支払いに関してはApp Storeを経由する以外の方法は認められていなかったわけである。メーカーのストアを通さない「勝手アプリ」に関しては今もAppleのデバイスにおいては認められていない。

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一方、我が国の携帯電話向けコンテンツの料金支払い手段は別にキャリアを通しても問題はなく、銀行振り込みやクレジットカード、プリペイドカードなど、キャリア以外の決済手段を用いても、もしくは広告収入で営業を行っても問題はなかった。もちろん勝手アプリや勝手サイトも認められており、今では球団を持つまでに成長したDeNAの「モバゲータウン」も元々は携帯電話専用のパソコンからの利用が禁止された、キャリア非公式の勝手サイトであった。

そう考えると、どちらがよりオープンな環境であるかは明確であり、すなわち、ユーザは喜んで「囲い込まれに行っている」と言ってしまって問題は無かろう。

そんな低性能低機能な端末かつより不自由な環境であるにもかかわらず、我が国で普及が進んだ理由はおそらく「Apple」というブランド力やそれに紐付くブランドイメージ、前述の「白黒液晶携帯電話」しか知らない欧米先進国の人々における評価があるのではないか。

すなわち、我が国の国民、いや人間という生物は芸能人がべた褒めしていたり、ブランドイメージ次第では汚い言い方をすると「ウンコでも食う」ということであろう。

ウンコ食って腹壊すのは勝手であるが、さすがにそれを人の責任にするのは間違っているのではないだろうか。

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